社長が会社で一番忙しい。
誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで働いている。
現場の問題が起きるたびに社長が入り、最後は社長が全部決める。
一見すると、責任感の強い社長に見えます。
でも僕は、こう考えます。
社長がずっと忙しすぎる会社は、未来を考える仕事が止まっている可能性があります。
社長の仕事は、今日の作業をすべて自分で終わらせることではありません。
会社がこれからどこへ向かうのかを考え、人を見て、次の挑戦を決めることです。
そのためには、今まで自分がやってきた仕事を、人に渡さなければなりません。
この記事では、社長が忙しすぎる状態から抜け出し、仕事を手放して組織を育てる3つの原則をお伝えします。
- 社長が忙しすぎる会社で起きていること
- 原則1|社長にしかできない仕事を決める
- 原則2|任せた直後の品質低下を受け入れる
- 原則3|仕事を取る人を育てる
- 暇な社長が考えるべきこと
- 仕事を手放す順番
- 仕事を渡すときに共有する5つのこと
- 仕事を取り返す前に確認すること
- 社長の予定に未来を考える時間を入れる
- 社長の忙しさに関するよくある質問
社長が忙しすぎる会社で起きていること
会社が小さいとき、社長が何でもやるのは自然です。
営業、採用、商品づくり、お客様対応、数字の確認。社長が一番詳しく、一番速くできる仕事も多いでしょう。
問題は、会社が成長しても、その状態が変わらないことです。
社長に確認しなければ進まない。
社長が休むと判断が止まる。
社員は社長から仕事が来るのを待つ。
これでは、社長だけが忙しく、周りに考える機会が渡りません。
管理者が部下より高い技術を持ち、すべてを自分でやり続ける組織は、強いようで弱いんです。
社長が仕事を抱えるほど、社員が育つ仕事は減っていきます。
原則1|社長にしかできない仕事を決める
最初に行うのは、仕事を全部並べることです。
そして、一つずつ問いかけます。
「これは、本当に社長にしかできない仕事か?」
社長が今やっている仕事と、社長がやるべき仕事は同じではありません。
社長にしか決められない未来の方向。
会社として何を大切にするか。
誰にどんな役割を任せるか。
次にどこへ投資するか。
こうした仕事には、考えるための余白が必要です。
一方で、手順が決まり、別の人が学べる仕事まで社長が抱える必要はありません。
「自分のほうが速いから」という理由だけで続けている仕事は、手放す候補です。
社長の時間は、今日を埋めるためではなく、会社の未来をつくるために使う。
その基準で、仕事を分けてください。
原則2|任せた直後の品質低下を受け入れる
仕事を任せられない理由として、とても多いのがこれです。
「自分でやったほうが品質が高い」
その判断は、短期的には正しいかもしれません。
長く続けてきた人から、初めて担当する人へ仕事を渡せば、最初は時間もかかり、品質も下がります。
でも、その瞬間だけを見て仕事を取り返したら、相手は永遠にできるようになりません。
任せるとは、完成した人へ仕事を渡すことではありません。
仕事を渡し、経験してもらい、フィードバックし、できる範囲を広げることです。
だから、任せる前に次を決めます。
- 絶対に守る基準
- 最初から完璧を求めない範囲
- 途中で確認する時点
- 終了後に振り返る内容
品質を下げてよいという意味ではありません。
一時的な品質低下を、育成に必要な期間として受け入れるということです。
今日の完成度だけでなく、半年後、一年後にその人がどこまでできるようになるかを見てください。
原則3|仕事を取る人を育てる
役員や幹部の役割は、社長に報告することだけではありません。
社長が持っている仕事を引き取ることです。
「それは社長の仕事です」と返すのではなく、「ここまでは自分が持ちます」と言える人が増えるほど、組織は強くなります。
そして、これは役員だけの話ではありません。
部下が上司の仕事を取る。
後輩が先輩の仕事を覚える。
店長がオーナーの判断を理解する。
仕事を取られることを、自分の価値が下がることだと思わないでください。
今の仕事を人に渡せれば、自分は次の仕事へ進めます。
部下に仕事を取られることは、損ではありません。組織と自分が成長する余白を得ることです。
社長は、仕事を取ってくれた人を評価してください。
そして、その人がさらに別の人へ仕事を渡せるように育ててください。
暇な社長が考えるべきこと
「社長が暇でいいのか」と不安になる人もいます。
もちろん、何も考えず、責任も果たさずに暇なのは違います。
でも、日常業務に追われていない状態そのものは、悪いことではありません。
余白があるから、未来を考えられます。
人の変化に気づけます。
新しい情報に触れられます。
今の事業を続けるべきか、変えるべきかを考えられます。
社長が今日のトラブルだけを見ていたら、会社の半年後、一年後を見る人がいなくなります。
社長の余白は、会社の未来を考えるための経営資源です。
忙しさを誇るのではなく、その時間を何に使ったかで判断してください。
仕事を手放す順番
いきなり全部を渡す必要はありません。
次の順番で、小さく始めてください。
- 今やっている仕事をすべて書き出す
- 社長にしかできない仕事と、学べば渡せる仕事を分ける
- 渡す仕事の目的と合格基準を言葉にする
- 一人を決めて、途中確認の時点を置く
- 終了後に、結果ではなく判断過程も振り返る
- できる範囲が広がったら、次の仕事を渡す
大切なのは、任せたのに細部まで社長が決め続けないことです。
失敗してはいけない基準は明確にする。
そのうえで、相手が考える余白を残す。
仕事を渡すことと、放置することは違います。
目的、基準、確認、フィードバックまでが任せる仕事です。
仕事を渡すときに共有する5つのこと
仕事を任せても戻ってくる会社では、作業だけを渡し、判断材料が社長の頭の中に残っています。
渡す前に、少なくとも5つを言葉にしてください。
1. 目的
この仕事は、誰のために、何を良くするためにあるのか。
目的が分からなければ、条件が変わるたびに社長へ確認が戻ります。
2. 完了の基準
何ができたら終わりなのか。
期限、品質、確認先など、社長だけが知っている合格ラインを共有します。
3. 任せる範囲
本人が決めてよいことと、必ず相談することを分けます。
権限が曖昧なままでは、失敗を恐れて動けません。
4. 途中確認
最後にだけ確認すると、ずれが大きくなります。
どの時点で何を見るかを、仕事を渡すときに決めます。
5. 振り返り
結果だけでなく、どこで迷い、何を基準に判断したかを確認します。
正解を教えるだけでなく、判断の軸を育てるためです。
任せるとは、作業を減らすことではありません。相手が判断できる情報と経験を渡すことです。
仕事を取り返す前に確認すること
任せた仕事の品質が下がると、社長はすぐ自分で直したくなります。
その前に、三つ確認してください。
一つ目は、守る基準を最初に伝えたか。
二つ目は、相手が経験できる時間を取ったか。
三つ目は、改善点を具体的にフィードバックしたか。
ここが不足したまま仕事を取り返すと、「やはり自分しかできない」という結論になります。
でも、それでは組織の能力は増えません。
重大な問題を止める必要があるときは社長が入る。
そうでなければ、基準を示し、もう一度任せる。
短期の完成度と、長期の育成を分けて判断してください。
社長が直したほうが速い仕事を、あえて教えながら待つ。
その時間が、未来の社長の時間をつくります。
社長の予定に未来を考える時間を入れる
仕事を手放しても、空いた時間へ別の作業を詰め込めば、社長の役割は変わりません。
未来を考える時間は、「余ったら取る」のではなく、先に予定へ置いてください。
会社がこれからどこへ向かうのか。
今の事業で続けるものと変えるものは何か。
誰が次の役割を担えるのか。
現場で起きている変化は何か。
社長が考えるべきテーマを決め、そのための情報を集めます。
ここでも、ただ暇にすることが目的ではありません。
今日の作業から離れ、未来と人へ時間を使える状態をつくることが目的です。
そして、考えたことを次の役割、投資、育成へつなげます。
忙しくない時間を、会社の未来をつくる仕事へ変えたとき、社長の余白は価値になります。
余白をつくることと、その余白を未来へ使うこと。この二つを同時に進めてください。仕事を渡す目的が明確になれば、社長も社員も、次の役割へ進みやすくなります。
社長の忙しさに関するよくある質問
人が少ない会社でも仕事を手放せますか?
すべてを手放す必要はありません。まず、繰り返している仕事や手順を説明できる仕事から始めます。一つの仕事を渡すだけでも、社長以外にできる人が増え、組織の止まりにくさが変わります。
任せると失敗しそうで怖いです
失敗できない範囲と、経験として挑戦できる範囲を分けてください。途中確認を置き、問題が小さいうちにフィードバックします。最初から社長と同じ品質を求めないことも必要です。
任せても結局、自分に戻ってきます
作業だけを渡し、目的や判断基準が渡っていない可能性があります。「何をするか」だけでなく、「何のために」「何をもって完了か」「迷ったとき何を優先するか」まで共有してください。
社長の仕事は、会社の未来を止めないこと
社長が忙しすぎる状態から抜け出すために、必要なのは気合いではありません。
仕事を分ける。
品質が一時的に下がることを受け入れる。
仕事を引き取る人を育てる。
そして、生まれた余白で未来を考える。
社長が全部できる会社より、社長がいなくても仕事が進み、社長が未来を考えられる会社のほうが強い。
今日、社長である自分がやっている仕事を、一度すべて書き出してみてください。
その中に、次のリーダーを育てる仕事が必ずあります。
人を育て、組織を前へ進める考え方は、毎日の小さな実践で磨かれます。
僕は毎朝の「鴨め〜る」で、仕事と人生を前へ進めるための学びを届けています。
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